『ナミビアの砂漠』のボダっ気がまるで回顧録のようだった

『ナミビアの砂漠』を観た。予備知識ゼロ状態で。

驚いた。18~20歳の頃の自分の回顧録を見てるようだった。主演の河合優実さんをもう少し幼くした感じの人と当時は交際していて、

  • 機能不全家庭
  • 失声症
  • 情緒不安定性 境界型人格障害
  • 激しい自傷
  • 酒でオーバードーズ
  • 自堕落な性
  • お水
  • 転落事故
  • 半身不随
  • 車椅子生活

などなど「そういう色」がどんどん濃くなっていく関係性だった。劇中のカナより、彼女のほうがアンニュイやダウナーな感じはひどかった。

めちゃくちゃ童顔なのに、いつも気だるそうにして、身だしなみもビミョー、下着が丸見えでも気にしない、ヘビースモーカーなど……「もったいない」という言葉はエゴだから使いたくはないけど、そう言いたくなるくらいギャップが大きかった。

発達心理学や認知科学を嗜んだ今だから言えるけど、彼女は認知機能の高さを自分で制御できなくて、己の頭の良さに振り回されてた。

現実での家族からのひどい扱われ方とそれによる自尊感情の欠落、本質的に唯一無二の希少性である「存在」という価値の直感的な把握、この狭間の矛盾に彼女は精神を蝕まれていた。

僕自身も人のこと言えず、まだ幼くて、勇気がなくて、自信がなくて、知識がなくて、彼女の環境を最適化するサポートができず、何を相談されても一緒に悲しんだり怒ったりすることしかできなかった。

学校が夜間だったから働いてはいたけど、まだ親元にいたし、自分のやりたいこともあったし、結婚を考える年齢じゃないと思ってた。今思えばその判断が、取り返しがつかないことをしたという意味で間違ってたとも言えるし、自分を不幸にしなかったという意味で正しかったとも言える。

彼女は本当は、劣悪な環境からキレイサッパリ抜け出させてほしかったんだろうし、暗にそれを訴えるための愚痴や相談だったんだろうけど、若造の自分にそこまでの男気はなかった。

幸い、劇中のように殴り合いのケンカで発散させるみたいなことはなくて、1日中散歩したり猫の戯れみたいな過ごし方したり、たいていは穏やかな日々だったけど、相手の自傷行為や浮気も日常で、そのたびに一悶着あって事態の収拾に奔走してた記憶がある。

ボーダーの症状としての「見捨てられ不安」からの「試し行為」だからしょうがないけど、本来は親から得るべき愛情をパートナーで補おうとしてるってことだから、もはや対等な関係じゃなかった。

かまうくん&かまってちゃん、ASD&ボーダー、化け物&化け物───後から振り返れば事件の匂いしかしないけど、当時は自分たちの関係がプラトニックだとかピュアだとか思ってたし、自分はちゃんとできてると思ってたから、人間ってのはほんと愚かやと思う。

その後お別れして、もっとえげつない人と関わることになってしまうんだけど、それはまた別の話……。

ナミビアの砂漠、あまりにも回顧録すぎて驚いた作品だった。

河合優実さんの演技力は、過去どの女優さんよりも突出してる気がする。杉咲花さんもすごいけど、個を消して役に憑依する能力としてはやっぱり河合優実さんだろうなぁ。

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